§1 皮膚感染症に付いて/皮膚感染症/感染症の知識 |
皮膚表面には常在菌が生息しています。この常在菌は人夫々、部位、年齢、季節、健康状態で変動はしま す。 皮膚感染症では常在菌自体が病原性を発揮しなくても、細菌が産生する毒素や酵素などで炎症は惹 起される事があり、原疾患の増悪(アトピー性皮膚炎の湿疹部位・褥瘡潰瘍部位に細菌集落形成/coloniza tionなど)を促がす事もあります。 こちらではその他にも皮膚ウィルス性感染症、皮膚真菌感染症の一部も ご紹介させて頂いております。 |
◎以下はこちらでご紹介させて頂いております皮膚感染症ヘッドラインです。 |
§2 皮膚感染症とは/皮膚感染症/感染症の知識
皮膚は外敵から防衛するための防御機能を示す最前線のものですが、微生物はその防御機能の間隙を縫
って侵入し、定着します。 アトピー性皮膚炎の様に角層の成分に異常がある場合、皮膚感染症に罹り易くな
ります。皮膚表面の防御機能には更に、遊離脂肪酸や常在菌による干渉作用があり、病原菌の定着、増殖
を妨げます。 皮膚常在菌感染叢は コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、 ミクロコッカス属、コリネバクテリウム属、
ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、 プロピオニバクテリウム属、ピチロスピルム属などがあり、皮
膚感染症の起炎菌には、ブドウ球菌属の黄色ブドウ球菌(コアグラーゼ陽性で皮膚感染症の起炎菌の約6
割を占める)や MRSA、CNS(起炎菌として全体の2割を占める)などの問題細菌があります。皮膚感染症
の罹患を防ぐために高い免疫力を維持する事も大切な事になります。
§3 毛包性感染症/皮膚感染症/感染症の知識
§3−1 カルブンケル(癰/よう)/毛包性感染症/皮膚感染症/感染症の知識
カルブンケルは複数の隣接する毛包が同時に侵され、多数のできものが出来ます。通常は毛包炎として始
まり、それが増悪してセツとなり、カルブンケル/癰(よう)(
多数のデキモノが出来、患部は大きく腫れ上がり、卵大から手のひら大にまでなってしまう事もあります。
激しい痛み、発熱、悪寒、化膿した毛穴からは黄色の膿
がでます。毛孔には膿栓が複数確認され、これが蜂の巣状の穿孔となり、最終的には壊死を伴なう皮膚潰瘍に至る事が多い。)となると考えられております。(下図毛包炎〜セツ〜癰も御参考にご覧下さい)起
炎菌の主体は黄色ブドウ球菌です。セツは毛包から炎症が周辺組織に及び、壊死、膿瘍を伴なうものです。
顔面、頚部、臀部、大腿部に好発します。
治療は抗菌薬投与により、膿瘍が形成されている部位には、可能であれば切開、排膿し、ガーゼドレーンも
短期間留置します。
ご参考;「フルンケル」通称おできと呼ばれるものです。毛根まで化膿し、ズキズキと激しい痛みを感じます。
症状が強く出る場合には発熱、頭痛、リンパ節が腫れる事もあります。
§3−2 毛包炎・尋常性毛瘡/毛包性感染症/皮膚感染症/感染症の知識
毛包炎は毛包に限局して起きる細菌感染です。いわゆる、毛の根元が何らかの原因で細菌に感染し、小さ
なニキビのような状態になります。化膿をもたらす起炎菌は黄色ブドウ球菌、CNSなどです。毛包炎の多く
は、黄色ブドウ球菌により起き、 留置カテーテルなどによる感染症はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)に
より起きます。「緑膿菌で起きるものには、温水プールやジャグジーバス(温水プール皮膚炎・温浴毛包炎・
ホットタブ毛包炎)などがあり、塩素処理がしっかりされていない為に起きるとされます。 偽毛包炎は髭剃り
の際に髭が中に入り、皮膚に刺激を与えて起きるもので、実質的には感染ではありません。」(上図毛包炎
も御参考にご覧下さい)
治療は温湿布、局所用抗生物質入り軟膏の塗布、範囲が広ければ抗生物質の内服などありますが、基本
的には毛包炎は治療なしでも自然に治ります。
尋常性毛瘡は硬い髭の生える部位に出来易いものです。いわゆるカミソリ負けは、髭の生えた毛穴に黄色
ブドウ球菌が感染して、炎症や化膿を惹起するものです。 口髭、顎髭などの硬い髭の毛包に一致して赤い
丘疹、膿胞が多発し、痂皮となり、触れると軽度の痛みも感じます。糖尿病などの基礎疾患のある人には起
こり易いとされております。
治療は髭剃りを止め、電気カミソリの場合でも間隔をあけて剃るようにします。抗生物質入りの軟膏を塗布
したり、酷ければ抗生物質の内服もします。 カミソリは切れ味の良い、衛生的なものを使用し、逆剃りを避
けたり、髭剃り後の肌の手入れや清潔度を心掛ける事も必要です。
§3−3 座瘡/毛包性感染症/皮膚感染症/感染症の知識
にきび(尋常性座瘡→普通のニキビ)は思春期の男性ホルモン作用による皮脂の分泌が亢進、毛包漏斗部
の角化異常(毛穴の出口が硬くなる角化異常)、 増殖したザ瘡桿菌由来リパーゼによる中性脂肪の分解の
亢進などが関与しているとされております。 即ち、毛包脂腺系の閉塞に伴ない発症する慢性炎症性疾患で、
毛孔に一致して発現します。炎症を伴なわない
皮疹(面皰/感染を起こしていない皮脂の栓が毛包内に詰まった状態)から
炎症を伴なう紅色丘疹、膿胞へ進展してゆきます。 その他のザ瘡では新生児ザ瘡→新生児に一時的に出来るニキビ、 嚢腫性ザ瘡→シコリになり痕が残りやすいニキビ、 集簇性ザ瘡(慢性膿皮症の
型)→嚢腫性ザ瘡同様シコリになり痕が残りやすいニキビ、 膿疱性ザ瘡→膿疱が目立つ、 薬剤性ザ瘡、夏
季座瘡、心因性座瘡、微生物因性→毛包虫、カンジダ、ピチロスポルムなど、 内分泌疾患によるもの→クッ
シング症候群、スタイン-レベンタール症候群、副腎性器症候群など様々なものがあります。
薬剤性ザ瘡では内服薬起因のものと外用薬起因のものがあり、内服薬起因のものでステロイド薬によるも
のは、面皰形成は少なく、初期から膿疱の多発するもので注意が必要です。内服薬起因のものでは、他に
経口避妊薬、抗結核薬、ハロゲン薬などがあり、外用薬では油脂、化粧品、ポリクロロビフェニール、ポリク
ロオナフタリンなどがあります。一部重複致しますが、誘因として上げられるものには、思春期にはアンドロ
ゲンの刺激で、皮脂の産生が亢進され、ケラチノサイドを増殖させ る事、 妊娠・月経周期に伴ないホルモン
変化が生じる事、毛包閉塞性化粧品を使用する事などがあります。
にきび(尋常性ザ瘡)は毛穴が詰まる事で起きます。顔は清潔にし、石鹸で良く洗顔し、化粧品は良く落とす
事が大切です。スキンケアでは洗顔の後に、乾燥する場合には保湿(化粧水→乳液やクリーム等ではなく)
などの配慮も必要になるかもしれません。クレンジング剤を使用した場合には、その後、洗顔する事も薦め
られております。クレンジング剤そのものが残る事で、ニキビを悪化させる結果になる事があるからとされて
います。その際、スクラブ入りを使用したり、こすり過ぎたリする事で皮膚に傷を� ��けない様に注意する事も
必要かもしれません。 この様な顔を清潔に保つ事以外にも、生活リズムを規則正しくしてホルモンバランス
に配慮した生活をする事や、動物性脂肪・糖質を摂り過ぎない様にしたり、緑黄色野菜・果物や食物繊維が
不足しない様に配慮した食品を摂る事など食生活も大切になります。
* 尋常性座瘡;活発な性ホルモン分泌で皮脂が増加し、 毛穴が詰まって中に皮脂がたまる事から始まりま
す。 この面皰(めんぽう)はその中でアクネ菌が増殖して炎症が起き、赤く腫れた紅色丘疹や、膿が溜まる
膿胞となります。更に進行しますと、深部に炎症が及び、瘢痕をも残す事になります。尋常性座瘡の治療は
従来は抗菌薬が中心でした。 抗菌薬は炎症性の皮疹に対しては有効ですが、その前段階である非炎症性
の面皰には効果が有りません。ところがアダパレンは面皰にも効果が認められ、炎症性皮疹への進行を抑
制するとし、1990年代から各国で承認が相次ぎ、標準治療薬として採用されております。 「国内の治験デ
ータでも面皰と炎症性皮疹を合わせた総皮疹数が減少(投与開始から半年で70%、1年で80%減少)した
」との報告があります。副作用も確認されておりますが、「その内容(大半が皮膚の乾燥や不快感など)は軽
微であった」というものでした。日本皮膚学会も2009年に発表したガイドラインで、アダパレンは第一選択薬
と位置づけられました。但し、東京女子医大皮膚科の某准教授によりますと、「実際の治療に際しては、抗菌
薬との併用が基本です」「組み合わせる事で好結果が得られる」としております。
§4 皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
皮膚・皮下組織感染症には伝染性膿痂疹(とびひ)、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、化膿性爪囲炎、蜂
巣炎などがあります。
§4−1 伝染性膿痂疹(とびひ)/皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
夏季に乳幼児の顔や四肢に多く確認される伝染性膿痂疹(とびひ)は、起炎菌で分類できます。水疱性膿
痂疹(黄色ブドウ球菌)と痂皮性膿痂疹(連鎖球菌)があります。治療は抗菌薬を内服し、抗菌薬含有軟膏
の外用も補助的に使用します。 顔や四肢などの露出部に多く確認されます。手足部水疱性膿皮症は、角
質層の厚い部位に出来る、(膿痂疹の水疱膜がしっかりと張り切った)水疱や 膿疱を形成する疾患です。
膿痂疹は細菌性皮膚疾患のなかでは最も多く確認される疾患です。
* 伝染性膿痂疹(とびひ)の手当てと予防;治療は、既にご紹介させて頂きました様に、 抗生物質(内服薬
や外用薬)を用い、かゆみを伴う場合には、飲み薬も併用します。夏は2回/日くらい石鹸を使い、優しくシャ
ワーで洗い流します。 入浴後は塗り薬をつけてガーゼで保護します。予防は手洗いの徹底、皮膚を掻きむ
しらない様にしたり、鼻を指でいじらない様にするなどの注意も必要になります。(鼻の中には黄色ブドウ球
菌が常在する事もあります)
水疱性膿痂疹の場合、0〜6歳児に多く、小さな水疱はすぐに大きくなり、膿性になります。この水疱が破れ
ますと、糜爛となり、 液に触れた部分は
皮疹が生じ、同様に水疱が出来、同様の経過を辿り、増えてしまうため、扱いには注意が必要になります。 別名とびひは身体のあちらこちらにとびひして増えてしまう事を示
しています。黄色ブドウ球菌が原因の場合には、水疱ができます。虫刺されや擦り傷などから黄色ブドウ球
菌が感染し、黄色ブドウ球菌が産生する表皮剥脱毒素により、皮膚に薄い膜の水疱ができます。水疱は次
第に濁り、水疱は簡単に破れ、糜爛となり、痂皮ができます。掻く事で飛び火し広がります。
痂皮性膿痂疹は比較的早期から厚く、黄褐色の痂皮を形成します(大きな水疱は形成しません)。季節や年
齢に無関係に発症します。顔や手足などの露出部の皮膚に好発します。水疱性膿痂疹の様に頻度は高くな
く、連鎖球菌だけではなく、黄色ブドウ球菌でも起こります。 中央に膿を持った
紅斑や丘疹が生じ、それらの小さな水疱や膿疱は黄褐色の痂皮となり、急速に広がってゆきます。 痂皮の周囲は赤い炎症を呈し、分泌
物が皮膚に付く事で、伝染します。
発熱や喉の痛み、近傍のリンパ節も腫れる事も多々確認されます。アトピー性皮膚炎などの皮膚の状態の芳しくないケースでは、 伝染性膿痂疹は感染し易い傾向にあります。小
児は
腎炎(膿痂疹腎炎)を起こす可能性がありますので、早期に専門医に受診する事が必要になります。§4−2 ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)/皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
新生児、乳幼児(0〜6歳)に多いブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)は、黄色ブドウ球菌が産生する
表皮剥脱毒素(ET)によるもので、血中に入ると中毒反応を起こし、 全身の各所に表皮顆粒層を障害し、
表皮細胞の壊死
、表皮細胞の剥離を招き、 潮紅、水疱、広範囲糜爛を招く毒素による障害を起こす熱傷様の表皮を剥脱を起こす症候群です。(赤く腫れた部位を触ると、非常に痛がります。)低年齢であるほど重症化
し易く、 生後1ヶ月以内の新生児が罹患する場合にはリッター新生児剥脱性皮膚炎とする特に重篤な皮膚
炎を呈します。黄色ブドウ球菌は、水疱性膿痂疹と同一の原因菌ですが、水疱性膿痂疹の方がまだ軽症で
す。表皮剥脱毒素は粘膜や皮膚に生じた感染巣に存在する黄色ブドウ球菌が産生するものです。血液検査
では、白血球増多、CRP上昇を確認し、多くの黄色ブドウ球菌が喉、鼻水、眼脂から分離されます。
粘膜に生じる障害部位は、鼻の粘膜と咽頭の粘膜が多い。感染すると発熱、悪感などの全身症状も示す。前
駆症状は
感冒様症状を示した後、 発熱(新生児では38〜40℃、乳幼児は微熱)、擦過部に潮紅、水疱、糜爛形成
などで、 物理的な刺激を受けると広汎に表皮剥離が生じてしまい、まるで熱傷様の外観を示します。(ニコルスキー現象)口の周りや、鼻の入口、目の周りが
赤く腫れ、水疱、かさぶた、眼脂に次いで、首の周りや腋下、股が腫れ
、全身の表皮は火傷の様に剥脱し、糜爛状態になります。治療は輸液などによる全身管理、抗菌薬の点滴静注などになります。皮膚を保護する為に、熱傷と同様の
対応もします。皮膚が乾いて皮が剥けて来た場合には、保湿用軟膏なども塗ります。
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