§1 皮膚感染症に付いて/皮膚感染症/感染症の知識 |
皮膚表面には常在菌が生息しています。この常在菌は人夫々、部位、年齢、季節、健康状態で変動はしま す。 皮膚感染症では常在菌自体が病原性を発揮しなくても、細菌が産生する毒素や酵素などで炎症は惹 起される事があり、原疾患の増悪(アトピー性皮膚炎の湿疹部位・褥瘡潰瘍部位に細菌集落形成/coloniza tionなど)を促がす事もあります。 こちらではその他にも皮膚ウィルス性感染症、皮膚真菌感染症の一部も ご紹介させて頂いております。 |
◎以下はこちらでご紹介させて頂いております皮膚感染症ヘッドラインです。 |
§2 皮膚感染症とは/皮膚感染症/感染症の知識
皮膚は外敵から防衛するための防御機能を示す最前線のものですが、微生物はその防御機能の間隙を縫
って侵入し、定着します。 アトピー性皮膚炎の様に角層の成分に異常がある場合、皮膚感染症に罹り易くな
ります。皮膚表面の防御機能には更に、遊離脂肪酸や常在菌による干渉作用があり、病原菌の定着、増殖
を妨げます。 皮膚常在菌感染叢は コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、 ミクロコッカス属、コリネバクテリウム属、
ペプトコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、 プロピオニバクテリウム属、ピチロスピルム属などがあり、皮
膚感染症の起炎菌には、ブドウ球菌属の黄色ブドウ球菌(コアグラーゼ陽性で皮膚感染症の起炎菌の約6
割を占める)や MRSA、CNS(起炎菌として全体の2割を占める)などの問題細菌があります。皮膚感染症
の罹患を防ぐために高い免疫力を維持する事も大切な事になります。
§3 毛包性感染症/皮膚感染症/感染症の知識
§3−1 カルブンケル(癰/よう)/毛包性感染症/皮膚感染症/感染症の知識
カルブンケルは複数の隣接する毛包が同時に侵され、多数のできものが出来ます。通常は毛包炎として始
まり、それが増悪してセツとなり、カルブンケル/癰(よう)(
多数のデキモノが出来、患部は大きく腫れ上がり、卵大から手のひら大にまでなってしまう事もあります。
激しい痛み、発熱、悪寒、化膿した毛穴からは黄色の膿
がでます。毛孔には膿栓が複数確認され、これが蜂の巣状の穿孔となり、最終的には壊死を伴なう皮膚潰瘍に至る事が多い。)となると考えられております。(下図毛包炎〜セツ〜癰も御参考にご覧下さい)起
炎菌の主体は黄色ブドウ球菌です。セツは毛包から炎症が周辺組織に及び、壊死、膿瘍を伴なうものです。
顔面、頚部、臀部、大腿部に好発します。
治療は抗菌薬投与により、膿瘍が形成されている部位には、可能であれば切開、排膿し、ガーゼドレーンも
短期間留置します。
ご参考;「フルンケル」通称おできと呼ばれるものです。毛根まで化膿し、ズキズキと激しい痛みを感じます。
症状が強く出る場合には発熱、頭痛、リンパ節が腫れる事もあります。
§3−2 毛包炎・尋常性毛瘡/毛包性感染症/皮膚感染症/感染症の知識
毛包炎は毛包に限局して起きる細菌感染です。いわゆる、毛の根元が何らかの原因で細菌に感染し、小さ
なニキビのような状態になります。化膿をもたらす起炎菌は黄色ブドウ球菌、CNSなどです。毛包炎の多く
は、黄色ブドウ球菌により起き、 留置カテーテルなどによる感染症はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)に
より起きます。「緑膿菌で起きるものには、温水プールやジャグジーバス(温水プール皮膚炎・温浴毛包炎・
ホットタブ毛包炎)などがあり、塩素処理がしっかりされていない為に起きるとされます。 偽毛包炎は髭剃り
の際に髭が中に入り、皮膚に刺激を与えて起きるもので、実質的には感染ではありません。」(上図毛包炎
も御参考にご覧下さい)
治療は温湿布、局所用抗生物質入り軟膏の塗布、範囲が広ければ抗生物質の内服などありますが、基本
的には毛包炎は治療なしでも自然に治ります。
尋常性毛瘡は硬い髭の生える部位に出来易いものです。いわゆるカミソリ負けは、髭の生えた毛穴に黄色
ブドウ球菌が感染して、炎症や化膿を惹起するものです。 口髭、顎髭などの硬い髭の毛包に一致して赤い
丘疹、膿胞が多発し、痂皮となり、触れると軽度の痛みも感じます。糖尿病などの基礎疾患のある人には起
こり易いとされております。
治療は髭剃りを止め、電気カミソリの場合でも間隔をあけて剃るようにします。抗生物質入りの軟膏を塗布
したり、酷ければ抗生物質の内服もします。 カミソリは切れ味の良い、衛生的なものを使用し、逆剃りを避
けたり、髭剃り後の肌の手入れや清潔度を心掛ける事も必要です。
§3−3 座瘡/毛包性感染症/皮膚感染症/感染症の知識
にきび(尋常性座瘡→普通のニキビ)は思春期の男性ホルモン作用による皮脂の分泌が亢進、毛包漏斗部
の角化異常(毛穴の出口が硬くなる角化異常)、 増殖したザ瘡桿菌由来リパーゼによる中性脂肪の分解の
亢進などが関与しているとされております。 即ち、毛包脂腺系の閉塞に伴ない発症する慢性炎症性疾患で、
毛孔に一致して発現します。炎症を伴なわない
皮疹(面皰/感染を起こしていない皮脂の栓が毛包内に詰まった状態)から
炎症を伴なう紅色丘疹、膿胞へ進展してゆきます。 その他のザ瘡では新生児ザ瘡→新生児に一時的に出来るニキビ、 嚢腫性ザ瘡→シコリになり痕が残りやすいニキビ、 集簇性ザ瘡(慢性膿皮症の
型)→嚢腫性ザ瘡同様シコリになり痕が残りやすいニキビ、 膿疱性ザ瘡→膿疱が目立つ、 薬剤性ザ瘡、夏
季座瘡、心因性座瘡、微生物因性→毛包虫、カンジダ、ピチロスポルムなど、 内分泌疾患によるもの→クッ
シング症候群、スタイン-レベンタール症候群、副腎性器症候群など様々なものがあります。
薬剤性ザ瘡では内服薬起因のものと外用薬起因のものがあり、内服薬起因のものでステロイド薬によるも
のは、面皰形成は少なく、初期から膿疱の多発するもので注意が必要です。内服薬起因のものでは、他に
経口避妊薬、抗結核薬、ハロゲン薬などがあり、外用薬では油脂、化粧品、ポリクロロビフェニール、ポリク
ロオナフタリンなどがあります。一部重複致しますが、誘因として上げられるものには、思春期にはアンドロ
ゲンの刺激で、皮脂の産生が亢進され、ケラチノサイドを増殖させ る事、 妊娠・月経周期に伴ないホルモン
変化が生じる事、毛包閉塞性化粧品を使用する事などがあります。
にきび(尋常性ザ瘡)は毛穴が詰まる事で起きます。顔は清潔にし、石鹸で良く洗顔し、化粧品は良く落とす
事が大切です。スキンケアでは洗顔の後に、乾燥する場合には保湿(化粧水→乳液やクリーム等ではなく)
などの配慮も必要になるかもしれません。クレンジング剤を使用した場合には、その後、洗顔する事も薦め
られております。クレンジング剤そのものが残る事で、ニキビを悪化させる結果になる事があるからとされて
います。その際、スクラブ入りを使用したり、こすり過ぎたリする事で皮膚に傷を� ��けない様に注意する事も
必要かもしれません。 この様な顔を清潔に保つ事以外にも、生活リズムを規則正しくしてホルモンバランス
に配慮した生活をする事や、動物性脂肪・糖質を摂り過ぎない様にしたり、緑黄色野菜・果物や食物繊維が
不足しない様に配慮した食品を摂る事など食生活も大切になります。
* 尋常性座瘡;活発な性ホルモン分泌で皮脂が増加し、 毛穴が詰まって中に皮脂がたまる事から始まりま
す。 この面皰(めんぽう)はその中でアクネ菌が増殖して炎症が起き、赤く腫れた紅色丘疹や、膿が溜まる
膿胞となります。更に進行しますと、深部に炎症が及び、瘢痕をも残す事になります。尋常性座瘡の治療は
従来は抗菌薬が中心でした。 抗菌薬は炎症性の皮疹に対しては有効ですが、その前段階である非炎症性
の面皰には効果が有りません。ところがアダパレンは面皰にも効果が認められ、炎症性皮疹への進行を抑
制するとし、1990年代から各国で承認が相次ぎ、標準治療薬として採用されております。 「国内の治験デ
ータでも面皰と炎症性皮疹を合わせた総皮疹数が減少(投与開始から半年で70%、1年で80%減少)した
」との報告があります。副作用も確認されておりますが、「その内容(大半が皮膚の乾燥や不快感など)は軽
微であった」というものでした。日本皮膚学会も2009年に発表したガイドラインで、アダパレンは第一選択薬
と位置づけられました。但し、東京女子医大皮膚科の某准教授によりますと、「実際の治療に際しては、抗菌
薬との併用が基本です」「組み合わせる事で好結果が得られる」としております。
§4 皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
皮膚・皮下組織感染症には伝染性膿痂疹(とびひ)、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、化膿性爪囲炎、蜂
巣炎などがあります。
§4−1 伝染性膿痂疹(とびひ)/皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
夏季に乳幼児の顔や四肢に多く確認される伝染性膿痂疹(とびひ)は、起炎菌で分類できます。水疱性膿
痂疹(黄色ブドウ球菌)と痂皮性膿痂疹(連鎖球菌)があります。治療は抗菌薬を内服し、抗菌薬含有軟膏
の外用も補助的に使用します。 顔や四肢などの露出部に多く確認されます。手足部水疱性膿皮症は、角
質層の厚い部位に出来る、(膿痂疹の水疱膜がしっかりと張り切った)水疱や 膿疱を形成する疾患です。
膿痂疹は細菌性皮膚疾患のなかでは最も多く確認される疾患です。
* 伝染性膿痂疹(とびひ)の手当てと予防;治療は、既にご紹介させて頂きました様に、 抗生物質(内服薬
や外用薬)を用い、かゆみを伴う場合には、飲み薬も併用します。夏は2回/日くらい石鹸を使い、優しくシャ
ワーで洗い流します。 入浴後は塗り薬をつけてガーゼで保護します。予防は手洗いの徹底、皮膚を掻きむ
しらない様にしたり、鼻を指でいじらない様にするなどの注意も必要になります。(鼻の中には黄色ブドウ球
菌が常在する事もあります)
水疱性膿痂疹の場合、0〜6歳児に多く、小さな水疱はすぐに大きくなり、膿性になります。この水疱が破れ
ますと、糜爛となり、 液に触れた部分は
皮疹が生じ、同様に水疱が出来、同様の経過を辿り、増えてしまうため、扱いには注意が必要になります。 別名とびひは身体のあちらこちらにとびひして増えてしまう事を示
しています。黄色ブドウ球菌が原因の場合には、水疱ができます。虫刺されや擦り傷などから黄色ブドウ球
菌が感染し、黄色ブドウ球菌が産生する表皮剥脱毒素により、皮膚に薄い膜の水疱ができます。水疱は次
第に濁り、水疱は簡単に破れ、糜爛となり、痂皮ができます。掻く事で飛び火し広がります。
痂皮性膿痂疹は比較的早期から厚く、黄褐色の痂皮を形成します(大きな水疱は形成しません)。季節や年
齢に無関係に発症します。顔や手足などの露出部の皮膚に好発します。水疱性膿痂疹の様に頻度は高くな
く、連鎖球菌だけではなく、黄色ブドウ球菌でも起こります。 中央に膿を持った
紅斑や丘疹が生じ、それらの小さな水疱や膿疱は黄褐色の痂皮となり、急速に広がってゆきます。 痂皮の周囲は赤い炎症を呈し、分泌
物が皮膚に付く事で、伝染します。
発熱や喉の痛み、近傍のリンパ節も腫れる事も多々確認されます。アトピー性皮膚炎などの皮膚の状態の芳しくないケースでは、 伝染性膿痂疹は感染し易い傾向にあります。小
児は
腎炎(膿痂疹腎炎)を起こす可能性がありますので、早期に専門医に受診する事が必要になります。§4−2 ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)/皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
新生児、乳幼児(0〜6歳)に多いブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)は、黄色ブドウ球菌が産生する
表皮剥脱毒素(ET)によるもので、血中に入ると中毒反応を起こし、 全身の各所に表皮顆粒層を障害し、
表皮細胞の壊死
、表皮細胞の剥離を招き、 潮紅、水疱、広範囲糜爛を招く毒素による障害を起こす熱傷様の表皮を剥脱を起こす症候群です。(赤く腫れた部位を触ると、非常に痛がります。)低年齢であるほど重症化
し易く、 生後1ヶ月以内の新生児が罹患する場合にはリッター新生児剥脱性皮膚炎とする特に重篤な皮膚
炎を呈します。黄色ブドウ球菌は、水疱性膿痂疹と同一の原因菌ですが、水疱性膿痂疹の方がまだ軽症で
す。表皮剥脱毒素は粘膜や皮膚に生じた感染巣に存在する黄色ブドウ球菌が産生するものです。血液検査
では、白血球増多、CRP上昇を確認し、多くの黄色ブドウ球菌が喉、鼻水、眼脂から分離されます。
粘膜に生じる障害部位は、鼻の粘膜と咽頭の粘膜が多い。感染すると発熱、悪感などの全身症状も示す。前
駆症状は
感冒様症状を示した後、 発熱(新生児では38〜40℃、乳幼児は微熱)、擦過部に潮紅、水疱、糜爛形成
などで、 物理的な刺激を受けると広汎に表皮剥離が生じてしまい、まるで熱傷様の外観を示します。(ニコルスキー現象)口の周りや、鼻の入口、目の周りが
赤く腫れ、水疱、かさぶた、眼脂に次いで、首の周りや腋下、股が腫れ
、全身の表皮は火傷の様に剥脱し、糜爛状態になります。治療は輸液などによる全身管理、抗菌薬の点滴静注などになります。皮膚を保護する為に、熱傷と同様の
対応もします。皮膚が乾いて皮が剥けて来た場合には、保湿用軟膏なども塗ります。
人はうつ病で何人格を持っていません
§4−3 化膿性爪囲炎(ひょうそ)/皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
爪甲周囲の皮膚や爪母基を、主に黄色ブドウ球菌(時に緑膿菌、大腸菌、カンジダ菌)が侵す急性の化膿
性疾患です。化膿性爪囲炎はひょう疽とも呼ばれている疾患で、 爪の変形、異常(爪棘、陥入爪、爪噛み、
外傷など)や手指の湿疹などでの表皮の損傷した部位からの細菌侵入によります。 爪の周囲に傷がある、
指しゃぶりで指がいつも湿った状態である、 水仕事が多い、手荒れが起き易いなどの環境条件により、荒
れた皮膚やわずかな傷から感染する事もあります。 ヘルペス性ひょう疽は水疱内から特徴的な巨細胞が
検出される事で細菌性と鑑別できます。
膿瘍形成部を中心に発赤、腫れ、疼痛が指尖部全体に及ぶ症状の著しいもので、圧迫すると爪廓部(指先
)下から膿が排出される事があります。時に大きな
膿疱が出来る事もあります。炎症が浅いケースでは、爪の周りに膿疱が出来、深い場合には関節や骨が侵されて、指趾を曲げる事も困難になります。爪の剥脱や、
リンパ管炎(腕・下腿のリンパ管に沿った炎症が認められる)を伴なう事もあります。緑膿菌に侵された場合
には、爪甲が黄緑色に
着色する(グリーンネイル)事があります。治療は爪棘があれば除去し、排膿は針穿刺により行い、抗菌薬の内服、抗菌薬含有軟膏の外用も補助的
に使用します。局所の発赤、腫れ、疼痛が強いケースでは、冷湿布をしたり安静にし、膿疱の状態によって
は皮膚を切開して排膿する事で痛みは弱まり、早く治癒します。
§4−4 丹毒/皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
連鎖球菌(特にA群β溶血性連鎖球菌)による急性の化膿性疾患です。小さな傷や掻破などにより表皮や
付属器経由で感染します。真皮が主体ですが、進行した場合には皮下脂肪組織にまで及びます。基礎疾
患に糖尿病、悪性腫瘍、 膠原病や内科的な疾患では、 リンパ管、静脈の鬱滞が関与している事が多いと
指摘されています。全身症状として
悪寒、発熱や境目の明瞭な浮腫性紅斑、重症例では水疱、膿疱、血疱が確認される様になります。(発熱は
突然の高熱を惹起し、 水疱や出血斑を伴なう事があります)また患部は
熱感、強い疼痛、所属リンパ節も痛みを伴う腫脹があります。(境のはっきりした、鮮やかな赤い腫れが急速に広がり、皮膚表面は張り、硬く光沢があり、
熱感を伴ない、触れると強く痛みます)丹毒は再発性があり、慢性リンパ浮腫を来たす事もあります。 蜂窩織炎の場合には丹毒より深部皮下脂肪組織の化膿性炎症で
あり、壊死性筋膜炎は皮下脂肪組織より下部の筋膜が侵されるものです。
|
検査では白血球増多、好中球の核の左方移動、CRP上昇、ASO(抗ストレプトリジンO)値上昇、ASK(抗
ストレプトキナーゼ)値上昇、赤沈亢進が確認されます。
治療は発赤、腫脹が消えるまで点滴静注によるペニシリン系抗菌薬の全身投与(軽症では内服もあります)
を継続します。冷パックや鎮痛薬で局所不快感が和らぐ事がある事や、足の真菌感染症が侵入門戸となる
ケースがあり、再発防止の為に真菌感染症に対応する治療の必要性が生ずる事もあり得るとされる。
§4−5 蜂巣炎(蜂窩織炎・フレグモーネ)/皮膚・皮下組織感染症/皮膚感染症/感染症の知識
蜂巣炎は皮膚の小外傷や掻破痕から直接、黄色ブドウ球菌などが感染、或いは足の白癬、虫刺症などの他
の皮膚病変から2次的に菌(主に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌)が侵入したり、 毛包炎、汗腺炎が炎症を起こし
て深部皮下組織を侵して発症するもので、皮下脂肪組織を主座(丹毒は真皮が主座)とする感染症です。
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治療を受けずに放置しておきますと、進行によりシコリの中心部組織壊死に至り、当該部位(シコリ中心部)
は軟らかくなり、膿が表皮を破壊し、潰瘍となる場合もあります。
白血球増多、好中球の核の左方移動、CRP上昇などの急性の炎症を示す結果を呈します。 治療は発赤、
腫脹が消えるまで、原則的には点滴静注による抗菌薬の投与、軽微であれば内服によります。
治療は抗生物質の内服(軽症の場合)、あるいは静脈注射(感染が急速に広がったリ、重く高熱を呈するよ
うな場合)による迅速適切な治療により感染拡大を防ぐ事が出来ます。
§5 その他の皮膚感染症/皮膚ウィルス感染症/皮膚感染症/感染症の知識
§5−1 伝染性軟属腫/その他の皮膚感染症/皮膚ウィルス感染症/皮膚感染症/感染症の知識
いわゆる水いぼと呼ばれるポックスウィルス感染症です。疣は米粒大(1〜5o程度)の正常皮膚色〜白色
で、光沢が有り、感染した皮膚表面には
丘疹、結節が多発します(時に単発のケースもありますし、3〜4個から50〜60個の場合もあります。)。 疣の中央部には小さな窪みも確認され、殆んど自覚症状は有りませ
んが、時に炎症や痒みを伴なう事も有ります。 伝染性軟属腫は、主に毛包から感染しますし、体幹・四肢な
ど身体のどこにでも感染します。小児の場合には、腋窩・体幹に好発する事が多く、成人の場合には、性行
為で陰部、肛門周辺に感染が広がる事があります。 接触で広がり、アトピー性皮膚炎や湿疹のある子供な
ど、皮膚の防御機能に障害の有る人に感染し易い、或いは重症になる傾向もあります。通常、6〜9ヶ月(平
均、約半年で脱落するという報告も有ります)から、 場合により、1〜2年で自然治癒し、痕も残らないとされ
ます。
伝染性軟属腫に対する有効な抗ウィルス薬は無く、治療は広がりを抑える為に、疣を取り除く為の凍結療法、
或いは、針やキューレット、鉗子などで疣の芯を取り除くなどの対応もします。摘除は自然消退するため、そ
れを考慮に入れた判断がなされます。 硝酸銀やグルタールアルデヒドなどの腐食剤などで摘除する場合も
あります。疣の周りに湿疹が出現し、掻く事で広がる事が有る為、湿疹に対して弱いコルチゾンクリームが処
方される事もあります。
予防の為に、発症した子供は、プールに入るのを避けたり(接触感染の為、肌と肌の接触やビート板などの
共用で感染の可能性があります)、お風呂に一緒に入らない、タオルなどの共用は避けるなどに注意します。
* 水いぼの治療;掻きむしって感染部位を広げてしまう前に、早期に医療機関で処置してもらう様にする事が
望ましい。治療広がりを抑える為に既にご紹介させて頂いた前述の方法以外にも、痛みを軽減するためにシ
ールや塗り薬を使用するケースもあります。ドライスキンなどで皮膚のバリア機能が低下していると感染し易
く、皮膚の清潔を保つ事が大切で、水泳後は腋の下や股なども丁寧に洗い流しましょう。
§5−2 帯状疱疹/その他の皮膚感染症/皮膚ウィルス感染症/皮膚感染症/感染症の知識
1997年〜2006年までの過去に無い帯状疱疹の大規模調査で は、この10年間で患者数は23%増加し、
累計発症率では26%増加しました。年代別発症率(千人あたりの患者数)では10代に小さなピークが有る
ものの、30代(約2、0)までは減り、以降70歳代まで増加します。そして50歳代(約5、1)で急激な増加を
見せ、70歳代では発症率は7、84とピークとなります。患者は10歳未満でも発症率は2、45あり、小児に
もまれな疾患では有りません。 月別では8月が最多で冬場は大きく減少しています。また、女性の発症率
は男性に比べて平均25%高く、年代別では50代を中心に、40代から60台にかけて女性の方が、男性を
大きく上回っております。 更に1997年と2006年の発症率の比較では、 60代から80代の女性に増加が
著しいという特徴があります。 帯状疱疹後神経痛は50代以上の人に多く、ペインクリニックでの治療の必
要性のケースが多々あります。
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皮膚の紅斑、水疱、膿疱、潰瘍、痂皮が知覚神経支配領域(皮膚神経分布/三叉神経、脊髄分節性、根性
分布)に沿ってできる痛みを伴った疾患です。 前駆症状として軽い疼痛や知覚異常があり、その後に小水
疱
を形成します。水疱ができる3〜4日前から体調が悪くなり、悪寒、発熱、吐気、下痢、排尿障害などもみられます。「神経痛様疼痛(チクチク、ピリピリした感じの痛み)で始まり、夜も眠れない様な強い痛みも現れ
ます。 (患部は軽く触れただけでも激痛が走ります)痛みの部分に一致して、皮膚に紅斑(紅いブツブツ)が
出来、1〜2日程度で小水疱(水を含んだ発疹、痛痒感を伴なう)が沢山出来ます。 水疱は1〜2週間程度
増え続け、破れて爛れます。その後、乾燥して痂皮(かさぶた)となり若い人では2週間、高齢者では3週間
程度で治ります。(小児の場合の症状は、成人に比べて軽い傾向にあります)胸部、腹部背中にできた帯状
の水疱は、強い痛みを伴います。 (ウィルスが知覚神経を障害する為に起きる)この痛みは、1週間程度で
山を超え、次第に和らいでその後治ります。」抵抗力が落ちる事で何回でも再発を繰り返します。特に高齢
者の場合は神経痛などの後遺症を残しますので、早期の治療が大切になります。(高齢者の場合、水疱が
治っても、痛みが数ヶ月続く場合も多々あります。 帯状疱疹後神経痛に移行し、患部に慢性的な痛みが持
続するケースもあります。 50歳以上で帯状疱疹に罹患した場合の25〜50%に、 程度の差はあるものの、
帯状疱疹後神経痛が確認されます。 眼を支配する顔面神経が侵された場合には、重篤な後遺症を残さな
い為にも確実な治療が必要です。)
帯状疱疹は自己保有のウィルスにより発症します。人から人に移る事は有りません。しかし、水疱に罹って
いない人の場合には、水痘として人に移す事があります。 (乳幼児との接触の無いように注意してください)
帯状疱疹の好発部位は胸や背中で、その他、頭、首、顔にも現れます。日本人は左側に多く発生する傾向
があります。
治療は抗ウィルス薬のアシクロビルやバラシクロビル、ファムシックロビルの内服(症状緩和、罹患期間短
縮の為)や、痛みに対しては鎮痛剤やビタミンB12の投与、三環系抗うつ薬の投与、痛みが激しい場合には
禁煙のための自然療法
神経ブロック療法、リン酸コデインの投与、コルチコステロイド薬の併用も選択されます。 水疱には抗生物
質、消炎鎮痛剤の軟膏を塗るなどで対応します。治療は早期であればあるほど症状も軽くて済みます。細
菌の二次感染を予防する為には、皮膚の状態を清潔を保ち、湿った状態にしない事も大切です。
帯状疱疹が出来た場合、注意する事としては、「安静にする事、栄養と睡眠をとる事、水ぶくれは破らない
事(化膿を防ぐ)、水ぶくれが破れて潰瘍となったり、爛れたりしている場合や重症の場合などでは入浴を
避ける事、患部を温める事で痛みを和らげ、それにより神経痛の予防にもなる」などが上げられます。
* 帯状疱疹後神経痛療法例;帯状疱疹発症後、7日以内に7日間程度抗ウィルス薬の内服或いは点滴対
応します。それにより通常、皮疹は1〜2ヶ月ほどで軟膏処置は不要となり、生活にも支障を来たしません。
二次感染が有る場合には、色素脱出や色素沈着が残ります。痛みは1ヶ月ほどでほぼ無くなりますが、10
〜30%程度は1ヶ月以上、2〜28%は6ヶ月程度持続するとされます。 1ヶ月以上持続する場合には、帯
状疱疹後神経痛と思われ、 紹介例では、神経ブロック、ブレガバリン、トラマドール・アセトアミノフェン合剤
内服が選択されています。その場合、副作用はブレガバリンはふらつき、トラマドール・アセトアミノフェン合
剤は悪心があるため、少量から始めて少しずつ増量後、徐々に減量します。 経過によりブレガバリン後、ト
ラマドール・アセトアミノフェンを併用します。それでも痛みを訴える場合には、神経ブロックが選択されます。
帯状疱疹後神経痛は帯状疱疹のうち、 60歳以上で60%、70歳以上で42%を占めていると紹介されてお
ります。
§5−3 ウィルス性疣贅(ゆうぜい)/その他の皮膚感染症/皮膚ウィルス感染症/皮膚感染症/感染症の知識
いわゆる「いぼ」の事です。疣には群れてできる種類のものや単独で出来るものなどがあり、その数も1〜
2個から数百個まで様々になります。その疣は、ヒト乳頭腫ウィルスが皮膚や粘膜上皮に感染して発現す
るものです。尋常性疣贅(最多)、尖圭コンジローマ(性活動期に多い、HPV6/11)、ミルメシア(HPV1)、色
素性疣贅(HPV4/60/65)、点状疣贅(HPV63)、疣贅状表皮発育異常症(遺伝性/極めてまれ)、扁平疣贅
(青年扁平疣贅、HPV3/10)などがあります。 (子宮頸癌はHPV16/18です)どの年代層にも確認されます
が(5歳以下はまれ)、特に学童期に最も多く見られます。加齢と共に増加傾向にあり、10〜14歳では30
%、それ以降20歳までは少ないが、25歳以降になりますと再度緩やかに上昇傾向を示します。
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扁平疣贅;青年扁平疣贅とも呼ばれる(中年以降には殆んどみられない)扁平疣贅は2〜3oの扁平に隆
起した
多角形丘疹で、顔面・頸部や前腕に多発する傾向があります。 パポバウィルス群のヒト乳頭腫ウィルスの感染により発症します。褐色或いは正常皮膚色で線状に配列する(
ケブネル現象/皮膚を刺激するとその部位に疣が次々にできてしまう)事も多々あります。 扁平疣贅が一時に
発赤、腫脹、掻痒などの症状を呈しますと、 一般的には(感染細胞に対する腫瘍免疫作用により)その数週間後に 自然消退します。
治療はヨクイニンなどの内服が選択されており、治り難い場合には、凍結療法も選択されます。
尖圭コンジローマ;尖圭コンジローマは、通常自覚症状に乏しい疾患ですが、外陰部の腫瘤、違和感、帯
下増量
、掻痒感、疼痛などで気付く事が多い。形状は乳頭状のものから鶏のとさか状のもの、カリフラワー状のものなど多様です。
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単純ヘルペス;単純ヘルペスウィルスはHSV−1(1型)とHSV−2(2型)が有ります。感染経路は接触感 染です。 本来HSV-1は顔や口唇、眼、皮膚などが主体で、HSV-2は外陰部や尿道などに病変は出現しま す。HSV感染症は皮膚や粘膜に小さな水疱が集団で出現します。 |
単純ヘルペスでは、口唇ヘルペス(口唇に水ぶくれや爛れ、過労、紫外線曝露などで誘発、初感染は不顕
性が多い、)、
疱疹性歯肉口内炎(発熱、口唇・歯肉・口腔粘膜に水疱多発、水疱の潰瘍化と治癒後の遷延化もある)、
疱疹性票疽(指尖、爪周囲に痛みを伴う小水疱、ひょうそ/票は正しくはやまいだれです。何らかの原因で指の皮膚などに発生した小さな傷からウィルスが侵入し、指先や爪周囲が赤く腫れて痛みます。)、
陰部ヘルペス(性器ヘルペスページ、性器ヘルペス例もご参照下さい)、疱疹性湿疹(アトピー性皮膚炎など
の疾患に単純ヘルペスウィルスが感染、
発熱、頭痛など)などがあります。HSV-1、HSV-2共に感染すると、神経節の細胞内に潜伏生息し、体力や免疫力の低下により、神経を伝わ
り、皮膚や粘膜に炎症などを発現するものです。 女性の場合、妊娠中の感染からの産道感染に付いては
性器ヘルペスをご覧下さい。 新生児ヘルペスは非常に重い感染症です。(性器ヘルペスに付きましては単
独ページを設けております。宜しければ、性器ヘルペスページも御参考にご覧下さい。)
初感染(日本の場合、性器ヘルペス初感染者は、HSV-1感染によるものが全体の70%程度です)では潜
伏3〜7日(or2〜2週間)の後、
発熱(38℃以上)を伴ない、感染部位が突然痒みを伴なう水疱が出来、水疱は破れて
爛れた病変が多発します。脚の付け根のリンパ節の腫れて痛み、病変は、女性の場合には外陰部、膣の入口、お尻、男性はペニスの尖端、陰茎、お尻に確認される様になります。 再発では陰部に
小さな水疱
や爛れが生じます。 この場合には症状は比較的軽く、通常、1週間程度で治ります。初感染では皮膚や粘膜のどこにでも感染します。再発の誘因は明確では無いながらも、日光、疲労、全身衰弱などか
らウィルスは再活性化するものと考えられております。
また、再活性化して口唇ヘルペスや陰部ヘルペスとなる場合、発熱、精神的ストレス、免疫機能の低下も引
金になると指摘されております。再発の場合にはHSV-1、HSV-2(HSV-1より再発頻度が高い)で夫々上半
身、下半身に再発します。(一部重複致します)
|
口唇周辺(顔、口唇、眼、皮膚)に発症するものはHSV-1(1型)が多く、陰部ヘルペス(外陰部、尿道)はHS
V-2(2型)が多かったが、近年のセックス形態の変遷により(オーラルセックスが原因)混合感染を起こして
います。近年の傾向では、性器ヘルペスは女性にも増加しており、性器クラミジア感染症に次いで多く確認
されております。 口唇ヘルペスは風邪をきっかけとして発現する事がよくあります。 口唇ヘルペスの症状は、
口唇orその周辺に
軽度刺激を伴なう小紅斑や小丘疹を生じ、その後水疱を形成します。 膿疱化を経て数日後に
痂皮化し、1〜2週間の経過後治癒しますが、しばしば再発を繰り返します。発疹が唇に発生した後、唇にピリピリした痛みを感じ、数分〜数時間で赤く腫れてきます。水疱は出来ない事もあります。糜爛の集まっ
たものが歯肉や口蓋に出来る事も確認されています。これらも1週間程度で治ります。口の内側では
糜爛が出来(
ヘルペス性歯肉口内炎 /小児に多い)、 全身倦怠感、発熱、頭痛、全身性の痛みが出現します。口内炎
は10〜14日程度続き、飲食が辛くなるほどに迄なります。 口の初感染では歯肉の腫れのみの症状の場合や、無症状もあります。(一部重複致します)
新生児ヘルペスでは新生児に産道などで感染性分泌物の接触により感染するケースがあります。膣部に
糜爛が有る場合には、感染し易い事は理解できますが、 糜爛が見られない場合でも、母親から感染する
ケースが多々有る事も確認されております。新生児でHSVに感染している場合、重篤であり、感染は脳や
皮膚に広がり、6〜7割は死亡し、施療しても脳障害が残ってしまいます。乳児期以降の感染の場合には、
HSV-1(1型)・不顕性感染が多く、 それが神経上行性に三叉神経や仙骨神経節の知覚神経節細胞に移
行した後、潜伏感染します。
アトピー性皮膚炎のある乳幼児や成人の場合、ヘルペス性湿疹に罹患する事で重篤な状態になる場合が
ある為、感染者に接触したり、近づく事を避けるように心掛ける必要があります。
治療は軽症の場合には自然治癒も有りますが、重症例や免疫不全児の場合には抗ウィルス薬(アシクロビ
ル)の内服、軟膏の塗布、重症の場合には点滴静注が行われます。アシクロビルで効果が不十分であれば
ビダラビンも選択されます。しかし、これは病気の根本治療ではなく、再発を繰り返す事があります。HSV感
染症を根絶できる抗ウィルス薬は現状では開発されておりません。 HSV-1は口唇を中心として上半身に再
発し、HSV-2は性器を中心にした下半身に再発を繰り返します。一度罹患しますと、持続潜伏感染などの大
きな悩みを抱える事になります。コンドームによる予防や、不特定相手のセックス、オーラルセックスなどを
控えるなどに心掛ける事が大切です。
予防の為に、罹患者の外出は控え、タオルなどの共用は避け、食器も別にし、患部を手当てした場合には
洗浄を充分にして下さい。再発を予防する為(免疫力を低下させない為)には、紫外線を避け、寒冷などの
刺激も避けてください。過労、精神的ストレスを避ける様に、努めて下さい。皮膚や粘膜にピリピリ感、ムズ
ムズ感などの違和感を感じたり、痛みなどを覚える場合には再発の可能性があります。
慢性疲労syndrの*§6 その他の皮膚感染症/皮膚真菌感染症/皮膚感染症/感染症の知識
真菌は原核生物とは明らかに異なる、真核生物で、動物が摂食、植物が自家栄養を特徴としますが、真菌
は吸収により生息する特徴があります。皮膚真菌症の重要な点は@日常的な疾患である事A体表部に症
状が発現する。 従い発見は容易であるが、主症状以外の部位も注意が必要である事B真菌による感染症
は、原核生物感染症に比して、 進行が緩徐で、場合により(疾患、部位)殆んど自覚症状が無い(ある時点
より極度に不愉快な症状を呈し、 発症してから自覚症状を呈するまで、相当な年月を要する事もまれでは
ない)C治療には時間を要することが多い、皮膚炎、細菌、ウィルスなどによる他の疾患に比し、 治療薬は
全く異なる為、素人療法ではより増悪を来たし易いD一般的に、皮膚浅在性真菌症は予後が良いが、皮膚
深在性真菌症に移行したり、他臓器に及ぶなどで致死的ケースもあるため、重症化させてはならないE輸
入感染症、HIV感染症に伴なう真菌感染症には注意を要するF誤診を招き易い疾患もあるので、専門医に
よる診断が重要です。
§6−1 皮膚粘膜カンジダ症/その他の皮膚感染症/皮膚真菌感染症/皮膚感染症/感染症の知識
皮膚粘膜カンジダ症はカンジダによる皮膚粘膜の真菌感染症です。糖尿病などの基礎疾患のある人やステ
ロイド・免疫抑制薬の長期投与中など、 更には妊婦、 肥満などでもカンジダ症に罹患しやすい傾向にありま
す。粘膜(口腔、舌、口角、外陰)や皮膚(腋窩、陰股部、指間、趾間)に寄生しやすいカンジダ・アルビカンス
は代表的な皮膚粘膜の真菌です。カンジダは口腔内、膣内の常在菌です。加齢や全身性の疾患などで免疫
力が低下しますと発現してきたり、他の病変に二次的に宿主形成する事もあります。 全身性カンジダ症など
では命に関わる事もあります。
治療は抗真菌薬(注射薬、経口剤、外用薬など)を使用します。注射薬(ミコナゾール、アムホテリシンBなど
)は真菌血症を呈していなければ、殆んど選択されておりません。経口剤は外用薬で治療が困 難な爪カンジ
ダ症、カンジダ性爪囲爪炎、慢性皮膚カンジダ症などに対して選択されます。鵞口瘡(口腔内カンジダ症)は
イミダゾール系ゲル剤、含嗽薬・内服薬としてはアムホテリシンBの製剤を用います。 カンジダはカンジダ性
食道炎を合併し易い為、経口剤はしばしば選択されております。アムホテリシンBは副作用がよく知られてお
りますが、内服薬ではその副作用が少ない為、 鵞口瘡或いはカンジダ性食道炎の治療で選択されておりま
す。 外用薬としてはクリーム、軟膏、ゲルなどの外用抗真菌薬を使用しますが、糜爛に対しては、外用抗真
菌薬の刺激により患部が増悪する事があるため、慎重に検討されます。 外用薬ではイミダゾール系、モルフ
ォリン系などが、カンジダに感受性を示します。皮膚を乾燥状態に保つ事は、治癒を促進し、再発を防止する
ため、ナイスタシンを含んだタルカムパウダーも用いられます。
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§6−2 癜風/その他の皮膚感染症/皮膚真菌感染症/皮膚感染症/感染症の知識
癜風の起炎菌は皮膚常在菌のマラセチアによるもので、棍棒状もしくはくの字形の真菌です。淡褐色斑/黒
色癜風は細かい鱗屑が付着するものと、 脱色素斑/白色癜風皮が知られております。 皮膚常在菌であり、
体幹などの脂漏部位(毛孔や表皮など)に胞子で存在しています。高温多湿、脂質を好み、夏季汗をよくか
く人の頸部や前胸部、上背部に確認されます。 高温多湿下で汗をかく事により菌は増殖し、菌糸形などに
形態を変化させ、癜風が発病する事になります。 体質的に皮膚が菌に弱い場合や汗をかきやすい人、皮
膚が脂っぽい人などは癜風は発症しやすく、スキンケアが大切になります。20〜40歳代に好発します。好
発部位は背部、胸部、頸部、上腕、腋窩などです。
初期は胸部や背部などに
白斑ないし淡褐色斑の拇指大程度までの大きさで発症しますが、放置しますと融合してしまい、
地図状斑を形成します。(皮疹の部分はわずかに鱗状で、カサカサし、時間が経過すると小さな皮疹は融合し、大きな皮疹を形成する事があります。)鱗屑をKOH直接鏡検で、仮性菌糸(菌糸型癜風菌
/太くて短い)や胞子が確認できます。ウッド灯で照射すると黄色の蛍光を発し、病変把握に有用です。
治療は抗真菌薬の外用によります。抗菌域の広いイミダゾール系(ケトコナゾール配合抗真菌薬クリーム)、
テルビナフィン配合抗真菌薬スプレーなどが選択されています。広範囲病変の為に、外用が困難な場合に
は、イトラコナゾール、フルコナゾールの内服も選択されますが、内服薬は副作用もある為、局所用薬の選
択が 優先されています。(治療に使用される硫化セレンシャンプーは処方濃度もまま感染部位(頭皮を含む)
に就寝前に塗布し、1晩そのままおき、翌朝洗い流す様にする方法が薦められています。これを3〜4晩継
続したり、10分間/日感染部位に塗布し、10日間継続する方法もあると紹介されています。)治癒後の皮膚
の色素沈着、脱色素などの色素異常は長期間残ります。また、癜風菌は皮膚常在菌であり、その故に再発
率も高く、再発防止も為には、硫化セレンシャンプー2、5%を毎月一回もしくは1ヶ月おきに使用する事を推
奨しています。
脂漏性皮膚炎は頭部や顔面の癜風菌との関連が注目されており 、アトピー性皮膚炎の増悪因子としても知
られております。熱帯や亜熱帯でよく確認され、また肥満なども誘因となります。(しろなまずは尋常性白斑
という色素異常症に属する疾患で、癜風とは異なる疾患です。)
§6−3 白癬症/その他の皮膚感染症/皮膚真菌感染症/皮膚感染症/感染症の知識
皮膚糸状菌症が人体の皮膚角質層に寄生して起きる皮膚疾患です。 皮膚真菌症には@白癬A黄癬(黄色
調の痂皮を呈する)B渦状癬(渦巻き状、木目状にみえる皮疹を呈する)の病型があります。
白癬症はTrichophyton rubrum Micfosporum canis、Trichophyton mentagrophytes、Epidermophyton flocco
sumなどが病原微生物で、概ね浅在性白癬と深在性白癬に分類されます。主に足に繁殖し易いのは、靴など
で足が蒸れて繁殖し易い条件が整っている為です。白癬症は、その寄生発症部位により分類されております。
浅在性白癬は足白癬(みずむし)、 股部白癬(いんきんたむし)、体部白癬(たむし)、頭部浅在性白癬(しらく
も)、手白癬、爪白癬、深在性白癬にはケルスス禿瘡、白癬性毛瘡、白癬性肉芽腫などと多彩であり、確認は
KOH直接鏡検 (病変部鱗屑、爪、毛髪など)で糸状菌糸が確認されます。 治療は抗真菌薬(イミダゾール系)
の外用が主体ですが、爪白癬、角化型足白癬の場合には抗真菌薬の長期内服による施療になります。
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「既に感染している場合には、入浴時以外でも、患部は頻繁に、丁寧に洗い、浴室の足拭きマットはよく洗
い、よく乾燥したものを使い、可能であれば使い分けます。タオルの共用は避け、靴は長時間履き続けず、
(可能であれば通気性の良いものやサンダルやメッシュのものを選択する)密閉性の高いものは避け、可
能であれば素足で過ごす。 靴下はナイロン製を避け、吸湿力の優れた材質の物を使い、清潔なものを使
用する。」などを心がけて下さい。
* 水虫と間違えやすい異汗性湿疹(汗疱);手のひらと足の裏に小さな水疱が生じて、皮膚がむけたり痒み
を伴ったりします。 夏季に悪化するので、汗が原因と考えられていましたが、今はニッケルやクロムなどの
金属にアレルギーのある人に多く、 食物から摂取した金属がイオン化して汗の中に溶けて起こる事が原因
の一つと考えられております。夏場に特に足の裏に発症しますと、水虫と間違えやすく、市販の水虫治療薬
を用いる事で、逆に悪化する事もあります。 従い、痒みなどの症状を自覚しましたら、皮膚科に受診する事
が肝要です。 治療は早期であれば、ハンドクリームによる皮膚の保護機能を保ち、症状が悪ければステロ
イド外用薬・痒み止めなどが用いられます。
* 梅雨時;梅雨時は部屋の湿度が増し、足の皮膚などの衛生状態が悪くなる事があります。 白癬菌で水
虫になると、 高齢者の場合、足腰の痛みの為に、足の指先などのケアを怠りやすく、悪化し、寝具などを
介して背中や陰部に広がるケースがあります。上手に足先を洗えない場合には、家族や介護者の手をお
借りして、清潔に保てる様に心がける事も必要になります。また、ひび割れだけで、痒くない部位に菌が繁
殖している場合もある為、 痒みのある部位だけを薬を塗る事が、再発を繰り返す原因になる場合がありま
す。症状が悪化する前に、足全体を清潔に保ち、塗り薬や内服薬による治療も必要になるケースもある事
をご記憶ください。
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* コアグラーゼ;バイオフィルムの形成に関与し、病変部への定着、抗菌薬からの物理的保護に関与している
と思われます。
* CNS;coagulase-negative staphylococci コアグラーゼ陰性ブドウ球菌は留置カテーテルの感染による敗
血症、人工関節手術後の化膿性関節炎などの起炎菌として知られております。
* コロニゼーション;colonizationは病変部から培養による細菌検出では、 菌が分離出来るのですが、発赤、
腫張などの感染徴候を示さないものです。
* 面皰;毛包管内に皮脂成分やザ瘡桿菌などの細菌類、角化物質などが溜まる状態で、毛包漏斗部の閉塞
が原因です。閉鎖面皰(毛孔が閉鎖したままの状態)と開放面皰(面皰内の内容物が増加して、毛孔が大きく
開いた状態)があります。
* 表皮剥脱毒素;黄色ブドウ球菌ファージU群71型、コアグラーゼX型などが産生する毒素。
* ニコルスキー現象;健常そうに見える皮膚を摩擦すると、簡単に表皮は剥離あるいは水疱を生じる現象。
* 皮膚浅在性真菌症;表皮または、毛包までのレベルに生じた真菌感染症のうち、主として角質や毛など表在
性に真菌が寄生するもので、口腔粘膜、外陰粘膜病変も皮膚真菌症に含まれます。
* 皮膚深在性真菌症;毛包周囲に強い炎症を伴なう、或いは、皮膚に肉芽腫を形成して、真皮以下に病変を
来たしてしまうものです。結節、局面、腫瘤、潰瘍、膿汁排泄などの症状を伴います。
* KOH法;水酸化カリウム(苛性カリ)法は鱗屑や水疱蓋、爪、毛を採取し、スライド硝子に載せて、20%KOH
を1〜2滴垂らしてカバーグラスをかけます。加温して角質を溶解させてから、視野を暗くした顕微鏡で鏡検す
るものです。この方法では白癬菌やカンジダなどの真菌は菌糸や胞子が容易に確認できます。(疥癬虫や毛
包虫、しらみなどの虫体や卵も確認できます。)
* 趾間型足白癬;趾間に落屑、侵軟などを来たす。
* 小水疱型足白癬;足裏に小水疱を来たす。
* 角質増殖型(角化型)足白癬;足裏から踵の角質増殖を来たす。
* 環状紅斑;縁が堤防状に赤みを帯び、軽い隆起で、中心部は平坦、色素沈着を来たす。
* 深在性白癬;皮膚糸状菌による皮膚深在性白癬の意で使用される。(白癬による内蔵病変を来たす事はま
れの為)
感染症の知識/皮膚感染症
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